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黄楊と本つげ(本つげと言う木は存在しない)



黄楊・柘植(つげ)は字が表すように黄色く石のように硬く適度な粘りもあり、古くから高級な櫛や将棋の駒、算盤玉、印判、版木などの素材として知られるツゲ科ツゲ属の木です。日本では鹿児島県の薩摩黄楊、三重県の朝熊黄楊(あさまつげ)、東京都の御蔵島黄楊「島黄楊」(しまつげ)が良質とされています。
植木では本つげと呼ばれる木がありますが、それはモチノキ科モチノキ属の木の「いぬつげ」や「まめいぬつげ」と区別するために便宜上呼ばれるようで、実際は本つげと言う木は存在しないようです。
印鑑の業界では、タイなど東南アジア産のアカネ科の木をシャムつげや本つげと表記していたこともあったようですが、公正取引委員会の指導により、素材の表記としてアカネ科の印材はアカネと表記されるようになったそうです。
当店も仕入れの段階で『本つげ』として入ってくる物がございます。
実際それが本つげと呼ばれる黄楊なのか、アカネなのか検証すべく、素性のわかる本柘と表記されているアカネの印材を仕入れて調べて見ました。
アカネ印材とアカネ木札印材はニスで塗装されているので側面は黄色い黄楊のような光沢がありますが、断面は『本つげ』として仕入れた木札と
まったく同じ色の系統のようです。
この『本つげ』黄楊と比べるとあきらかに、赤黒いのですが黄楊の代用品として、使われるほどの木ですので、檜等と比べるとはるかに硬く木目などの癖も無く、黄楊の粘り気のある材質には劣りますが、黄楊に準ずる細密彫刻向きの木です。

左アカネ 右御蔵島産黄楊写真右の木札は国産の黄楊の中でも最も高い評価を受けている御蔵島産の黄楊です、左のアカネ(本つげ)と比べるとニスで塗装しなくとも黄色い木だと言うことがわかります。
現在この二つの素材を使って木札のサンプルを作成中です。

【参考】
学名にBuxusが付く物がツゲ科で世界に約70のツゲ属が存在している。
他の物は、ツゲと名は付きますが別の科の植物です。
●ツゲ(学名:Buxus microphylla var.japonica)
●セイヨウツゲ(学名:Buxus sempervirens)
●チュウゴクツゲ(学名:Buxus sinica)
イヌツゲ(学名:Ilex crenata)
▲マメイヌツゲ(学名:I.crenata f bullata)
▲シャムツゲ(学名:Rubiaceae gardenia)

イヌツゲの原木



今日は、お休みなのですが知り合いの植木屋さんへ
イヌツゲの原木を仕入れに行きました。
ファイル 88-1.jpgファイル 88-2.jpg
伐採をお願いしたイヌツゲは樹齢約40年位らしいですが切り口は
緻密な感じで色もツゲ同様の見事な黄色です。
ファイル 88-3.jpgファイル 88-4.jpg
丸太のまま、お店に持ち帰り後ほど乾燥するのに適当な大きさの
角材に加工します。
ファイル 88-5.jpg

イヌツゲは、黄楊とは違いツゲ科ツゲ属の木では無く
モチノキ科モチノキ属の木です。

乾燥させてどのように変化するのか、またイヌツゲは黄楊の
代用品としても使われるようで、市場で売られている黄楊の
真贋を見極めるうえでもこのような素材があると便利です。
原木での見分け方法は、葉が互い違いに出ているところです。

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